江戸時代の鍼灸術指南書『鍼灸重宝記』には、妊娠の項目があり、
子宝に恵まれる為のツボが紹介されている。
何れも冷えを取り除き、元気を旺盛にする作用がある。
冷え性の改善で妊娠に達し易くなるのは、臨床において良く経験することである。
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不妊治療としての鍼灸は欧米でも試みられており、
人工授精や体外受精(IVF:in vitro fertilisation)に鍼治療を加えて妊娠率が上昇する等の報告もある。
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鍼治療によって、
子宮に分布する交感神経の活動が抑制され、子宮内の血流が上昇すること。
また、GnRH(ゴナドトロピン**放出ホルモン)の分泌に影響するβ-endorphinが放出されることが確認されており、結果として月経周期、排卵、受精率や着床率に影響を及ぼすものと考えられる。
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IVFなどの生殖補助医療(ART:assisted reproduction technology)は
治療費が高額であり、長期に及ぶと精神的身体的な負担も大となる。
現代医療の技術をもって採卵・受精・胚移植をしても
その着床から出産に到るまでの胎児の成長は、母体自身の力に大きく依存している。
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鍼灸の役割は生命力の強化にあり
この点で大いに貢献できる力をもっている。
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**ゴナドトロピン(LH:黄体形成ホルモン、FSH:卵胞刺激ホルモン)
下垂体前葉で分泌されるゴナドトロピンは卵巣に作用して卵胞の発育、排卵、黄体の維持を促し、卵巣の顆粒膜細胞や黄体からエストロゲン、プロゲステロン、インヒビン等のホルモン分泌を調整している。
**Effects of acupuncture on rates of pregnancy and live birth among women undergoing in vitro fertilisation: systematic review and meta-analysis. Manheimer E, Zhang G, Udoff L, Haramati A, Langenberg P, Berman BM, Bouter LM. BMJ. 2008 Mar 8;336(7643):545-9. Epub 2008 Feb 7. Review.
*Role of acupuncture in the treatment of female infertility. Chang R, Chung PH, Rosenwaks Z. Fertil Steril 2002;78:1149-53.
平成庚寅年 穀雨