トイレに間に合わない

ある年の3月、仕事が終わり帰宅しようとしていたら高齢の女性から電話を受けました。


トイレに間に合わずに粗相をしてしまうことが今朝から3-4回あったとのこと。寝室からリビングを通りトイレまで5-6mの距離が、とても長く感じる。明日にも泌尿器科を受診するつもりだが、施術をしてほしいとのことでした。


すぐにでも伺ったほうが良いと思い、往診の支度をして急いで患家へ出向きました。


女性は87歳で長いお付き合いの患者さんです。3年前に夫をなくし現在は一人暮らし。長男家族は近所に暮らしているが、身の回りのことは助けを受けることなく自立した生活をしています。病院嫌いで通院しているところはありません。健康が自慢で身体には自信があるようでしたが、このようなことを経験して少し弱気になっている様子でした。


明日には、病院を受診する予定とのことなので、私は体全体の調子を整えることと泌尿器に関係する箇所の滞りを取り除くことにしました。


施術は、下腹部とくに恥骨周辺、腰・仙骨の当たりと肝腎の経絡に丁寧に鍼をしました。お灸はしていません。施術中、身体が温もり、表情が柔和になってきたので、治療の量は少なめでしたが終了しました。

施術後、すこし安心したとのこと。


翌朝、電話してみました。
調子良くなったらしく、病院には行かないとのこと。今日は、毎週通っている体操教室の日なので、そちらへ行くつもりだそうです。
私は、今日は用心して安静にしてはどうかと促しましたが、どうしても教室に行きたいとのことでした。


施術直後に症状が軽快した患者さんによくあるケースが、今まで溜め込んでいた仕事や楽しいことを存分にやってしまい、せっかく回復基調になっていたものが悪化してこじれてしまうことです

軽快して気分が明るくなっているので、教室に行くかどうかの判断は本人にお任せしました。
2日後、電話しました。8割ほど良くなって、普通の生活に戻ってるとのこと。
一回の施術で、回復の方向性が出たのでしょう。喜ばしいことです。

ネットで似たような症状で切迫性尿失禁というものがありました。今回のケースと同じなのかはわかりませんが、私にとって貴重な経験となりました。