目次
蘘荷 ミョウガ
みょうがは、(本草綱目_李時珍)に記載されています。日陰を好み、木の陰でもよく育ちます。旧暦八月の初めに株の上を踏みつけると、根が良く茂り、翌年には花がたくさん咲きます。茎は若い時に食べ、夏と秋には花を食べます。花をつける時期によって夏咲きと秋咲きの二種類があります。
旧暦九月の初めに、株の周りの根を取って薬とします。白い根を砕き、水飛法によって粉を取り、打目・つき目に対して水で溶いて何度も塗ると効果があります。旧暦十月に糠を上に被せておくと、寒さで傷みません。みょうがは、鉄を嫌います。植え替えをして根が切れると、弱って茂りません。みょうがの若芽を蘘草(じょうそう)と言います。
茎が長くなったものを日陰で乾燥させて割り、縄にします。これは丈夫で様々な用途があります。秋の初めにたくさん収穫して蓄えておくべきです。馬の履物にすれば長い道のりも大丈夫で、俗に千里沓(せんりくつ)と言います。また、草鞋(わらじ)を作り、木履の緒にも使います。
本草濕草上にのす。陰地を好む。樹下にも宜し。八月の初其上をふみつくれば、根滋茂して来年花多し。苗茎わかき時食す。夏秋花を食す。花を生ずるに夏秋二種あり。
大和本草_巻之五_草之一
九月の初、其傍生の根を取て■と為す。白根をくだき、水飛して粉をとり、打目つき目に水に和し、うすくして屢(しばしば)ぬれば效あり。十月に糠を上におほへば寒にいたまず。ううるに鐵をいむ。移し植て根きるれば、かじけて茂らず。其苗を蘘草と云。
其茎の長きを陰乾にして、わりて縄とす。つよし。其用多し。秋初多く收おくべし。馬の沓にすれば長途を行ても破れず。俗に千里沓と云。また、わらんぢを作り木履の緒に用ゆべし。
注釈
用語解説
- 本草濕草上(ほんぞうしつそうじょう): 本草綱目_第15巻・草之四_濕草類
- 陰地(いんち): 日陰。
- 樹下(じゅげ): 木の下。
- 滋茂(じも): よく茂ること。
- ■: 薬のこと?(難しい漢字なので表記できませんでした)
- 水飛(すいひ)する: 漢方薬で使用する生薬を細かな粉末にする方法を行う。
- 打目(うちめ)つき目: 目の病か?「打目」 は打撲傷、「つき目」 は突き傷かもしれません。
- 屢(しばしば): 何度も。
- 糠(ぬか): 玄米を白米にする際に出る粉。
- おほふ: 覆う。
- ううる: 植える
- 蘘草(じょうそう): みょうがの若芽。
- 陰乾(いんかん): 日陰で乾燥させること。
- 沓(くつ): 馬沓(うまぐつ)。馬の蹄を保護するために、馬に履かせる履物。
- 千里沓(せんりぐつ): 長い道のりも可能な耐久性のある馬沓。
- わらんぢ: 草鞋。
- 木履(ぼくり): 木製の履物。下駄?
2024年(令和6年)の旧暦と新暦の対応表
旧暦 | 新暦 |
1月 | 2023年11月20日 – 12月19日 |
2月 | 2023年12月20日 – 2024年1月18日 |
3月 | 2024年1月19日 – 2月17日 |
4月 | 2024年2月18日 – 3月18日 |
5月 | 2024年3月19日 – 4月17日 |
6月 | 2024年4月18日 – 5月17日 |
7月 | 2024年5月18日 – 6月16日 |
8月 | 2024年6月17日 – 7月16日 |
9月 | 2024年7月17日 – 8月15日 |
10月 | 2024年8月16日 – 9月14日 |
11月 | 2024年9月15日 – 10月14日 |
12月 | 2024年10月15日 – 11月13日 |
閏12月 | 2024年11月14日 – 12月13日 |
旧暦は月の満ち欠けを基準にした暦であり、新暦とは1ヶ月程度のずれがあります。そのため、旧暦の正月は新暦の1月下旬から2月中旬頃に当たります。
また、旧暦では、月の運行と太陽の運行のずれを調整するために、数年ごとに閏月が挿入されます。2024年には閏12月があります。
大和本草
『大和本草』(やまとほんぞう)は、江戸時代の1709年(宝永6年)に貝原益軒によって刊行された、日本最初の本草書です。全16巻と付図2巻からなり、薬用植物だけでなく、動物、鉱物、農産物、加工食品など、幅広い分野の自然物について解説しています。
特徴としては、
実地調査に基づく記述: 貝原益軒自身が全国を旅して観察・収集した情報に基づいており、実用的な知識が豊富です。
批判的・実証的な視点: 中国の本草書『本草綱目』を参考にしながらも、その内容を鵜呑みにせず、日本の風土や実情に即した記述を心がけています。
幅広い分野への関心: 薬用植物だけでなく、動物、鉱物、農産物、加工食品など、幅広い分野の自然物を取り上げ、博物学的な視点を持っています。
『大和本草』は、江戸時代の自然科学や本草学の発展に大きく貢献し、現代でも日本の植物学や民俗学などの研究において重要な資料として活用されています。
まとめ
この大和本草の文章は、みょうがの栽培方法や薬効、利用方法について述べたものです。みょうがは日陰を好み、花が咲く時期によって二種類あること、根に薬効があることなどがわかります。また、冬の寒さ対策として糠を被せること、茎を縄として利用でき、馬の履物や草鞋になることなどが記されています。