肺炎と並ぶ重要な病態
起炎菌の同定と適切な抗菌薬の選択が重要
高齢者特有の排尿環境や病態の理解が大事
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感染症全体の4割を占める。
ほとんどが腸内細菌属によって引き起こされる。
大腸菌 腸内細菌、グラム陰性桿菌
クレブシエラ属 土壌や水中に生息、グラム陰性桿菌
セラチア属 土壌、水中、動植物中にみられる、グラム陰性桿菌
Citrobacter属
Enterobacter属
など
ほとんど外因性
外尿道口からの逆行性感染
女性は、解剖学的特徴から感染源多い
膀胱内での菌の繁殖から
上行性に感染し腎盂腎炎に至る。
膀胱炎だけでは、発熱しない。
腎盂腎炎は、高熱(39-40℃)
実質臓器への感染から血行性感染が起こり有熱症状が出る。
腎、副腎、前立腺、精巣、精巣上体
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・高齢者が尿路感染症になりやすい理由は?
下部尿路閉塞
膀胱機能低下などの排尿機能低下
飲水摂取量の低下
ADLの低下
免疫力の低下
尿道へのカテーテル留置
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ウロセプシス
重症化のプロセス
血行性感染
↓
菌血症
↓
敗血症
↓
ショック
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尿路感染症の分類
症状の有無
無症候性細菌尿
症候性尿路感染症
臨床経過から
急性
慢性
基礎疾患の有無
単純性
複雑性
感染の部位
上部尿路感染症(腎盂腎炎)
下部尿路感染症(膀胱炎)
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尿流量の減少により
尿路局所の防御機構の低下から
複雑性尿路感染症の頻度が高まる。
複雑性尿路感染症に関わりうる主な基礎疾患
尿路結石
神経因性膀胱
尿管狭窄
尿道狭窄
膀胱がん
尿管腎盂がん
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治療
速やかに抗菌薬治療やドレナージが必要
『JAID/JSC感染治療ガイド2014』に尿路感染症における治療ガイドラインがあ
る。
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単純性と複雑性では、治療に対する考え方が大きく異る。
単純性尿路感染症の分離菌は、グラム陰性桿菌が多い。
大腸菌が全体の7割
よって、大腸菌をターゲットにして抗生物質を選択する。
一般に、薬剤感受性は良好。
近年は、1割程度が薬に対して耐性を示す。
複雑性尿路感染症の場合は、薬物耐性は高い傾向
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単純性尿路感染症
基礎疾患のない宿主において
細菌が尿道および腎に逆行性に感染することで発症。
通常は、抗菌薬の投与で治癒
複雑性尿路感染症
尿路に基礎疾患がある宿主に感染。
基礎疾患があるかぎり、
再感染や再燃の可能性が高い。
治療の基本は、基礎疾患を解決すること。
漫然と、抗菌薬を投与することは、
耐性菌予防の観点から慎むべき。
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急性単純性腎盂腎炎
腎排泄型の薬剤を選択
軽症例では、外来・経口薬で7-14日間
重症例では、入院・注射薬で14日間投与する。
治療開始3日後に効果判定。(抗菌薬投与から解熱までに72時間程度かかるのが一般的)
注射薬の場合は、症状寛解後24時間を目処に内服薬に変更。
合計で、14日間投与する。
効果の判定は熱だけを参考にしない。症状に加えて一般尿検査値、細菌数減少、亜硝酸塩減少、グラム染色で菌が見られなくなった等を参考にする。
地域特性を考慮。地域での耐性菌の情報やどのような抗生物質が有効化などを知っておくと効果的に薬を選択できる。
腎盂腎炎は敗血症ショックの原因となるので、外来での治療の場合は細やかな通院が必要。
抗菌薬を投与前に、尿培養に加えて血液培養をしておくと、
薬が効かなかった場合や再発時の抗菌薬選択の参考になる。
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ウロセプシス(尿路原生敗血症)
尿路感染症から生じた敗血症。
全敗血症の1/4
腎盂腎炎の2-3割が菌血症へ
多くは院内感染の尿路由来
9割以上が尿路留置カテーテルに関連。
先行する膀胱炎や
発熱を含む腎盂腎炎・前立腺炎・精巣上体炎の症状が見られる。
ショック状態を伴うことがあり
血行動態に注意が必要
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予防
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尿流の確保
尿管の内圧を上昇させない
残尿なく排尿できてるか
一日の尿量を把握
排尿状態の改善には
ADLの改善
特に、上体を起こす座位や立位の時間が重要
人から産生される尿は、尿管蠕動運動と重力によって下部尿路へ運ばれる。こ
の蠕動運動は臥位の状態では効率的に機能しない。
人体の構造上、排尿は座位もしくは立位が効率が良い。
臥位では排尿困難で残尿の可能性高い。
ベッドアップや体位交換による体動のみでも効果ある。
排尿自立や誘導は非常に重要
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ほぼ寝たきり状態では
時間を決めてのおむつ交換になると思うが、
排便が確認されたら
速やかに便を取り除き、便が尿道に付着したままにしないことだ。
参考
1. 泌尿器疾患における感染症対策-高齢者と尿路感染症-
Geriatric Medicine, 2015.53(3): p. 247-254.
2. 高齢者に多く見られる尿路感染症の特徴と疫学.
Geriatric Medicine, 2012. 50(11): p. 1279-1284.
3. 人体常在菌. 医薬ジャーナル.