目次
はじめに
鍼灸治療は、体表の情報から身体の状態を把握し、治療に活かすという特徴があります。
これは、中国思想の「体用」の概念に基づいています。
そこで今回は、東洋医学の根底にある「体用」という考え方について分かりやすく解説していきます。
体用とは何か?
体用とは、「実体と作用」「本体と現象」などの関係性を指す言葉です。
「体」: 実体、本体、根本的なもの、第一次的なもの
「用」:作用、現象、派生的なもの、第二次的なもの
体用関係の例
例えば、水に風が吹くと波が生じます。このときの「水」と「波」の関係は、体用関係の一例として捉えることができます。
「体:」:水
「用:」:波
「水」という実体から「波」という現象が生じる様子が、体用関係を現しています。
因果関係との対比
一方、風と波の関係は、因果の関係です。原因と結果ですね。
「原因:」: 風
「結果:」: 波
風という原因によって波という結果が生じる様子が、因果関係を体現しています。
体用一致と因果別体
このように、体用関係と因果関係は、密接に関連しながらも区別されるべき概念です。
「体用一致:」: 体と用は一体のものである
「因果別体:」:原因と結果は異なるものである
「水」と「波」の関係は体用一致であり、「風」と「波」の関係は因果別体であると言えます。
鍼灸における体用
東洋医学では、体用という概念が、身体を観察する上での基本となります。
「体:」:五臓六腑
「用:」:経絡、ツボ
身体の本体は、五臓六腑です。身体は五臓六腑が調和して働くことで、健康を保っています。五臓六腑にはそれぞれ関連する経絡やツボがあって、いずれも体表にあります。
五臓六腑と関連する皮膚、顔色、脈、舌、腹の状態などを観察することで、身体の状態を推測することができるのです。
つまり、見ることのできない体内の状態を、見ることができる体表から推察するのです。体内の変化は必ず体表に現れるという体用の概念が根底にあります。
体用の具体例
体用に基づいた東洋医学の具体例をいくつか挙げてみましょう。
- 病が慢性化すると脈が沈んでいる:病の長期化という「体内状態」が、沈脈という「体表状態」に反映します。
手首の脈は身体の状態を把握する一つの手段です。痛みがあれば硬くなり針金を触っているような感じでピンピンとしてくるし、疲れていると脈も貧弱になります。脈の数だけ診ているわけではありません。 - 肺などの呼吸器が弱い人は上背部の毛穴が開く:呼吸器系が弱いという「体内状態」が、上背部の状態に反映します。
肺の働きは皮膚に現れます。皮膚のくすみ、ザラつき、硬い、冷たい等は、肺の力が十分働いていないか弱っています。
まとめ
鍼灸治療は、「体用」の概念に基づいて、体表の情報から身体の状態を把握し、治療に活かしているのです。
今回の記事が、鍼灸への関心が高まるきっかけとなれば幸いです。