食は飯の気を中心とす

身体というものは不思議なもので、
生まれてから死ぬまで
一貫して生命を保とうと力を尽くし続けます。

この驚異的な力は、
この世界のすべてを生み育て止むことのない【気】が
身体にも常に働いているからこそ得られるものです。

【気】はいろんなチャンネルを通して
身体の中に摂り込まれ循環し、そして体外に排出されます。
そうやって自身を保ち生かし続けているのです。
取り込み・循環・排出の三者のうちで
意識的に変え得るものから取り組んでゆけば
養生の質を上げることが出来るのです。

例えば、食事。
これは【気】を摂り込む行為です。
あらゆる食材は【気】の凝縮したものに他なりません。
良質の食材、鮮度の高いものは、身体を作るための最高の材料になります。
また、あらゆる食材には個別の特性があり、
毎食の食材の組み合わせによって身体への影響も違ってきます。

三浦梅園の『養生訓』には、
食事について心に留めたい記述がありますので、此処に紹介いたします。
◆◆◆
すべての食事の大原則としては、ご飯を中心とします。
漢方薬には君臣佐使といって、中心的な役割をなす生薬を君主と位置づけて、
他の臣佐使はその臣下として位置づけて君の生薬を助けるように配合していきます。これに習って、食事においてもご飯の役割を助けるように副食を位置づけます。決して副食が主食のご飯より目立ってはなりません。加えて、過食など極端なことをしなければ養生を害することもないでしょう。
[原文]
すべて食事の法は、食(いひ)の気を主とし、薬に君臣佐使といふをたてたるがごとし。其の外の物は、食の臣たり、佐使たらしめて、飯の気にかたしめず。飲食重過だになき時は、養老の道に害なし。
◇注)
*食は飯(いひ)の意。ご飯のこと。
*君臣佐使(くん・しん・さ・し) 漢方薬は、複数の生薬を混ぜて作られています。中心的な作用をもつ生薬を君薬、君薬の作用を補強するものを臣薬、君臣薬の効能を調節するものを佐薬、君臣佐薬の補助的な役割を担い、また服用しやすくするものを使薬とします。薬膳も、この考えが基本です。
例えば、葛根湯は、葛根が中心的な役割を担うので君薬。他の麻黄、桂枝、生姜、炙甘草、白芍薬、大棗は、その臣下として葛根の作用を補助します。